がん(癌)部位別情報

◆咽頭がん

咽頭がん(癌)は頭頸部がんの一種です。

咽頭は、鼻の奥から食道までつながっている器官で上咽頭、中咽頭、下咽頭の3つの部位に分けられ、 それぞれの部位にできるがんを上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんといいます。

上咽頭は鼻の突き当たり(鼻腔後方)にあり、扁桃腺の上部奥の咽頭扁桃辺りにあります。
中咽頭は口を大きく開けたときに奥に見える部分になり、食べ物を飲み込んだり、言葉を喋るのに必要です。
下咽頭はのどぼとけ(喉頭)の後ろ側にあり中咽頭から送られてきた食べ物を食道に通す通り道になります。

咽頭がんの原因

咽頭がんの発生原因はタバコ、お酒、熱い食べ物、刺激の強い食べ物です。
また男性に多く発生(4~5倍)するがんで、年齢的には50歳代~60歳代に多く発生します。
米国におけるがん死亡についての調査によれば男性の喫煙者が咽頭がんや口腔がんになる率は非喫煙者と比較して30倍近くとなっています。

※詳しくは生活習慣とがんの発生について書いた「がんは予防できる」をご覧下さい。

咽頭がんの症状

上咽頭がん

上咽頭がんの早期は殆ど無症状ですが、症状が進行すると首のリンパ節が腫脹していき、鼻づまり、鼻血、痰に血が混じる、難聴、耳閉感などの症状が現れます。
また、脳神経が圧迫された場合は視覚障害や疼痛が起こることがあります。

上咽頭がんは低分化型の扁平上皮がんの場合が多く、他の頭頸部がんと比較すると肺や骨、肝臓などへの遠隔転移が多く見られるのが特徴です。

中咽頭がん

中咽頭には扁桃をはじめとしてリンパ組織が多くあり悪性リンパ腫と混合しやすいですが、中咽頭がんと悪性リンパ腫は他のがんとして区別します。

中咽頭がんは初期症状として喉の違和感、異物感、軽い痛みなどが現れるため、食事の際に軽い痛みが継続するような場合は注意が必要です。
片方の扁桃腺だけが大きく腫れたり、喋りにくさを感じた際も注意が必要です。
また、首のリンパ節(頚部リンパ節)に転移しやすく、首に出来たシコリから発症に気付く場合もあります。

中咽頭がんのほとんどは扁平上皮がんで、頚部リンパ節がおもな転移先になります。

中咽頭がんが進行すると耐え難い痛み、出血、口が開けにくくなる開口障害、物が飲み込め無くなるほどの嚥下障害、呼吸困難などの症状が出るようになります。

下咽頭がん

下咽頭がんは喉頭の後ろ側にでき、症状が深刻化しなければ自覚症状が殆どありません。
症状が進むと喉の違和感、異物感、軽い痛み、耳の奥の痛み、声のかすれ、呼吸困難、首のリンパ節の腫れなどの症状が現れるようになります。

初期にはほとんど自覚症状がないため、発見時には進行がんである場合が多く、同時に食道に転移ではない原発がんが見つかることが多いのが特徴です。

下咽頭がんの殆どは扁平上皮がんで、頚部リンパ節が主な転移先になります。

咽頭がんの治療

咽頭がんの治療法は外科療法や放射線療法が中心となります。
化学療法は単独での治療では効果ほぼ確認できないため放射線療法や外科療法の補助的な治療として位置づけられています。
治療方法はがんの進行度(病期)や発症部位、患者さんの年齢などから判断されます。

咽頭がんの病期

上咽頭がん

Ⅰ期

がん細胞が上咽頭に留まっている状態

Ⅱ期

がん細胞が中咽頭や鼻腔などの隣接する部位に浸潤しているが、リンパ節への転移は無い状態
咽頭側方へ浸潤があるか鎖骨上のリンパ節以外の片側リンパ節に転移がある状態
がん細胞が上咽頭に留まっているが頚部リンパ節に6cm以下の転移が見られるか、咽頭側方から頭蓋底付近へのがんの浸潤がある状態

Ⅲ期

がんが骨組織や副鼻腔に拡がっているか、頚部リンパ節両側に6cm以下のリンパ節転移がある状態

Ⅳ期

がんの浸潤が進み、原発場所と同じ側の頸部リンパ節への転移が6cmを超えるか、鎖骨上まで及ぶ遠隔転移が認められる状態

中咽頭がん、下咽頭がんは下記のように病期判断を行います。

・2cm以下の大きさをT1
・2cmを越え4cm以下の大きさの場合をT2
・4cmを越えた場合をT3
・周囲の筋、骨、喉頭などへ進展した場合をT4

中咽頭がん

Ⅰ期

がんがT1の大きさで頸部リンパ節転移がない状態

Ⅱ期

がんがT2の大きさで頸部リンパ節転移がない状態

Ⅲ期

がんがT1またはT2の大きさで、同側の頸部に3cm以下のリンパ節転移が1個のみ認められる状態
あるいはがんがT3の大きさで頸部リンパ節転移がない状態

Ⅳ期

T4になったと認められる状態
頸部リンパ節転移が2個以上3cmを超える大きさになるか、反対側の頸部に転移した状態
遠隔転移が認められた状態

下咽頭がん

Ⅰ期

がん細胞がT1の大きさであり、下咽頭の1箇所に留まり頸部のリンパ節への転移がない状態

Ⅱ期

がんがT2の大きさで頸部リンパ節転移がない状態

Ⅲ期

がん細胞が下咽頭の周辺部位に拡がって喉頭の中に広がり声帯が動かない状態か、がんの大きさがT3で同じ側の頸部リンパ節に3cm以下の転移が1個ある状態

Ⅳ期

T4になったと認められる状態
頸部リンパ節への転移が2箇所以上多または6cmを超える状態
他の臓器へ転移している状態

咽頭がんの治療

早期の上咽頭がんは手術が行われることは殆どありませんが、放射線療法を行っても消失しないリンパ節転移に対してはリンパ節を切除するリンパ節郭清が行われることがあります。

中咽頭がんや下咽頭がんの場合にもまずは放射線療法が選択されます。
がん細胞が進行している場合や、放射線が効きにくい場合、再発しやすい部位の場合は手術療法が行われることになります。

咽頭がんの治療 放射線療法

咽頭がんの場合、頚部リンパ節などに転移があっても放射線感受性が高いため放射線療法が主体となり、手術よりも優先されます。

中咽頭がんでは上部には低分化型扁平上皮がんが、下部には高分化型扁平上皮がんが多く発生しますので主な治療方法も発生箇所により異なります。

下咽頭がんでは高分化型扁平上皮がんが発生することが多いため、手術療法を優先するケースが多いです。

放射線療法を行っても消失しないリンパ節転移に対してはリンパ節を切除するリンパ節郭清が行われることがあります。

骨への転移のための痛み、脳の神経症状、呼吸の苦しさなどの症状を緩和する目的で放射線療法が行われることもあります。

咽頭がんの治療 化学療法

咽頭がんでは抗がん剤単独での治療では効果がないため放射線療法と同時に行われることが多く、放射線療法や外科療法の補助的な治療として位置づけられています。

放射線の照射後に再発したり、完全に消失できなかった場合には単独で使われることがあります。

使用される抗がん剤としては「5FU+シスプラチン(他にランダ、ブリプラチン)」が一般的です。
カルボプラチン=パラプラチンが使われることもあります。
他にタキソールやタキソテールを使ったり、シスプラチンと併せてブレオマイシン、メソトレキセートなどが使われることもありますが、臨床段階(効果の確認中)になります。

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