◆悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球ががん化した悪性腫瘍で、主に首やわきの下、胸部、腹部、足の付け根、骨盤部などにあるリンパ節に腫れや臓器にコブ(腫瘤)を作ります。
リンパ球の悪性腫瘍には他に、リンパ性白血病という病があります、リンパ性白血病はがん細胞が血液や骨髄の中で増殖したものです。
悪性リンパ腫は、がん化した細胞の種類や遺伝子にどのような異常があるかによって「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」とに大きく2つに分類されます。
非ホジキンリンパ腫
非ホジキンリンパ腫は全身のあらゆる器官、組織に発生する病気で、日本人の場合は悪性リンパ腫のうち90%程が非ホジキンリンパ腫です。
非ホジキンリンパ腫には、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫とNK細胞リンパ腫があり、更に細胞の形や予後から低悪性度リンパ腫、中悪性度リンパ腫、高悪性度リンパ腫の3つに大別されます。
非ホジキンリンパ腫の症状
非ホジキンリンパ腫の症状は首の周りやわきの下、足の付け根などのリンパ節が腫れてくることが多く、発熱や体重の減少、発汗、倦怠感などが現れる場合がありますが痛みは殆ど感じません。
皮膚のすぐ下にあるリンパ節にしこりが出来て発見される場合があります。
胸部や腹部など体の奥にあるリンパ節が腫れた場合には触っても分かりにくいですが気道や尿道を圧迫するため咳き込んだり、尿の出が悪くなるなどで気づく場合があります。
悪性リンパ腫はリンパ節以外の臓器に腫瘤ができる場合があり、この場合は部位ごとの症状や健康診断で発見されることが多いです
頸部、腋窩、鼠蹊部、胃のリンパ節などに無痛性の膨張があるとき、原因不明の発熱が続くとき、大量の寝汗が続くとき、恒常的に疲れやすいとき、原因不明の体重減少、原因不明の疼痛が続いた場合などは悪性リンパ腫の恐れがありますので医師に相談することをお勧めいたします。
非ホジキンリンパ腫の診断
悪性リンパ腫の診断の基本は、腫れているリンパ節や腫瘤の一部を切除して顕微鏡で調べる病理組織検査(生検)となります。悪性リンパ腫のタイプや、悪性度の判定などができ治療方針を決める上で重要な検査となります。
診断では免疫学的な検査を行いT細胞、B細胞、NK細胞いずれのリンパ腫であるか調べます。
さらに病気の拡がりを調べるためにCT、MRI、PET、内視鏡、腹部超音波、X線検査、骨髄検査、血液検査、シンチグラフィーなどを用いる場合があります。
ホジキンリンパ腫
ホジキンリンパ腫は「リードシュテルンベルグ細胞」という特徴的な細胞が見られる悪性リンパ腫で、20歳代と60歳代の人に比較的多く発症します。
ホジキンリンパ腫は悪性リンパ腫の1割程ですが治療成績が良くなりやすいがんです。
症状は非ホジキンリンパ腫と類似しています。また検査も同様の方法が取られます。
病期 | |||
---|---|---|---|
Ⅰ期 | Ⅱ期 | Ⅲ期 | Ⅳ期 |
腫瘍細胞が1つのリンパ節領域のみに浸潤している | がんは2つ以上のリンパ節領域に拡がっているが横隔膜を境として、一方の側にとどまっている。あるいは、 リンパ節以外の臓器や組織にも拡がっているが、限局的であり横隔膜を境にして同側のリンパ節領域にとどまっている | がんが横隔膜を境として上下両側のリンパ節領域に認められる。加えてリンパ節以外の臓器や組織への浸潤がある場合でも1つに限局している | 1.病変がリンパ組織以外の臓器にびまん性ないし多発性に見られる。がんはそれらの臓器の周囲にあるリンパ節に見られることもある。 2.がんがリンパ組織以外のたった一つの臓器にしかなくても遠隔リンパ節転移を伴う場合 |
病期 | |||
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Ⅰ期 | |||
腫瘍細胞が1つのリンパ節領域のみに浸潤している | Ⅱ期 | ||
がんは2つ以上のリンパ節領域に拡がっているが横隔膜を境として、一方の側にとどまっている。あるいは、 リンパ節以外の臓器や組織にも拡がっているが、限局的であり横隔膜を境にして同側のリンパ節領域にとどまっている | Ⅲ期 | ||
がんが横隔膜を境として上下両側のリンパ節領域に認められる。加えてリンパ節以外の臓器や組織への浸潤がある場合でも1つに限局している | Ⅳ期 | ||
1.病変がリンパ組織以外の臓器にびまん性ないし多発性に見られる。がんはそれらの臓器の周囲にあるリンパ節に見られることもある。 2.がんがリンパ組織以外のたった一つの臓器にしかなくても遠隔リンパ節転移を伴う場合 |
ホジキンリンパ腫の治療では以前は放射線療法がよく行われていましたが、現在は化学療法が治療の中心になっています。
放射線療法の場合は照射部分が大きくなると白血球減少や貧血、血小板の減少による出血など骨髄の障害が強く出ることがありますので、選択する際は治療計画を確認しておくと良いでしょう。
化学療法を用いる場合、Ⅰ~Ⅱ期の場合であれば、アドリアシン、「塩酸ブレオマイシン:商品名=ブレオ」、「硫酸ビンブラスチン:商品名=エクザール」、「ダカルバジン:商品名=ダカルバジン」の4種類の抗がん剤を併用する「ABVD療法」に放射線療法を併用するのが標準的な治療になります。
ホジキンリンパ腫のⅢ~Ⅳ期ではABVD療法をより強力に行います。
低悪性度リンパ腫の治療
低悪性度リンパ腫は濾胞性リンパ腫、胃や唾液腺、甲状腺、消化管、眼などの粘膜関連リンパ組織に発生するMALTリンパ腫などを指し、進行は遅いが抗がん剤が効きにくいという特徴があります。
I~II期の場合には放射線療法が選択されることが多く、およそ半数が治癒します。
III~IV期まで進行した場合は治癒は期待しにくいため化学療法が標準療法となりますが、症状のない場合や病気が進行する傾向が無い場合では生存期間の延長は確認されていないため、症状が悪化してから化学療法を開始する場合もあります。
濾胞性リンパ腫の場合は最近認可された「リツキシマブ:商品名=リツキサン」用いることで治療成績が格段によくなっています。
胃に発生するMALTリンパ腫の場合には「ヘリコバクター・ピロリ菌」という細菌ががんの進行に関与している場合が多く、菌を除菌することで病変が改善することが多いです。
また眼のリンパ腫の場合には標準的に放射線療法が行われます。
低悪性度リンパ腫は経過観察中に中悪性度に進展することがありますが、この場合には中悪性度リンパ腫と同様の治療を行うのが一般的です。
中悪性度リンパ腫の治療
中悪性度リンパ腫の代表はびまん性大細胞型Bリンパ腫です。
この悪性リンパ腫は抗がん剤の効きやすく「ビンクリスチン:商品名=オンコビン」、「シクロホスファミド:商品名=エンドキサン」、「ドキソルビシン:商品名=アドリアシン」という3種類の抗がん剤に副腎皮質ホルモン剤のプレドニゾロンを加えたCHOP療法が標準療法になります。
治療前の腫瘤が大きい場合には化学療法終了後に放射線療法を加えるのが標準的になっています。I~II期の場合では70%以上が治癒する可能性があります。
高悪性度リンパ腫の治療
高悪性度リンパ腫の代表はT細胞リンパ芽球性リンパ腫とバーキットリンパ腫で、週単位で症状が急速に進行しますが、抗がん剤が効きやすい傾向があります。
T細胞性のリンパ芽球性リンパ腫は若年男子に多いリンパ腫で非ホジキンリンパ腫の標準療法では治療効果が出にくいため強力な多剤併用化学療法が行われます。 化学療法での治癒が困難であると判断された場合には骨髄移植が行われることがあります。
バーキットリンパ腫の場合にはエンドキサン、メソトレキセートなどの抗がん剤を大量に用いることで効果が期待できます。
化学療法を強力に行えば副作用も強く、白血球の減少による感染症、血小板の減少による出血などが起こりやすくなるため、身の回りを清潔に保ちウイルスや細菌などの感染を予防する必要があります。
治療中は規則正しい生活を送り、免疫力を高める努力が必要となります。