冬虫夏草と日本冬虫夏草
「冬虫夏草」とは昆虫に寄生し、虫体成分を栄養源にしてキノコ(子実体)を形成する菌類(虫草菌)の一種です。
虫草菌類は日本だけでも350種類以上の生息が確認されておりますが、天然では発見するのも難しく人口栽培も困難な希少なキノコです。
虫体成分を栄養源とする特徴によって、飲用時の効能は虫草菌の種類(寄生した昆虫)によってそれぞれ異なるのも特徴です。
「日本冬虫夏草」とは日本に生息する虫草菌類の総称です。
山形県にある自然薬食微生物研究所では複数の大学や医療機関と共同で30年以上に渡って日本の冬虫夏草(二次代謝産物)の研究(臨床)を行っており、この研究によって複数種の日本冬虫夏草(二次代謝産物)で癌、認知症、自己免疫疾患など複数の難治疾患に対する改善作用などが示唆され、現在でも研究が進められています。
一方で、漢方の本場である中国での「冬虫夏草」は主にチベットに生息してオオコウモリガの幼虫に寄生、子実体を形成する天然のOphiocordyceps sinensis(オフィオコルディセプス・シネンシス)のみを指します。
中国では古くからこの冬虫夏草を様々な症状に効く薬膳として重宝しており、乱獲の影響によって希少化した現在でも様々な病に効果がある健康食として注目を集めています。
コブアブタケ
|
ツクツクホウシタケ
|
ベニイロクチキイモムシタケ
|
日本冬虫夏草で期待できる効能について
宮城県仙台市にある自然薬食微生物は世界的に見ても数少ない虫草菌類の研究機関であり、昭和42年(1967年)より日本冬虫夏草の研究を続けています。
この長年の研究によってある種の日本冬虫夏草(二次代謝産物)に「細胞の酸化を防ぎ細胞のがん化を阻害するフラボノイド・テルペノイドやメラトニン」「がん細胞の活動を抑制するコルジセピン」「免疫抑制作用があり自己免疫疾患の治療薬になっているミリオシン」など、がん治療において有益だと考えられる成分を多く含んでいることを明らかにしています。
下記には、これまでの研究と臨床報告によって改善が見られた症状の一部を掲載しております。
DNAの持つ遺伝情報に傷が付くと細胞が突然変異を起こす場合があり、急激な細胞の老化やがん化の原因となります。
日本冬虫夏草には適度な抗酸化作用が見込めるメラトニンやフラボノイドなどの抗酸化物質が含まれており、飲用することでDNAの損傷を防ぎ、老化やがんの予防作用が期待できます。
抗がん剤や放射線治療、手術前に日本冬虫夏草二次代謝産物エキスを適量飲用することで病院治療の副作用として現れやすい骨髄抑制、鬱の症状、食欲不振などの症状を軽減、改善して治癒を早める作用が期待できます。
抗がん剤や放射腺治療は副作用によって骨髄細胞の機能を低下させるため、血球数の減少から感染症や貧血の原因になる場合があります。
日本冬虫夏草の1種であるハナサナギタケには、血球の増加作用があるエリスロポエチン(EPO)の産生を促進する作用を持つ成分が含まれており、飲用することで血球量を増加させる作用が期待できます。
日本冬虫夏草に含まれる主な有効成分
◆エルゴステロール・パーオキサイドエルゴステロールはビタミンDの前駆物質でステロールの一種の酢酸物質でがん細胞の血管新生を阻害する作用が報告されており、がんを細胞死へと誘導することで抑制する効果が報告されています。
※単離:ある種の混合物から特定の成分だけを取りだす事
この誘導体はエルゴステロールを母体とした化合物で、ヒト由来の肺がん、子宮頸がん、舌がんなどに対するアポトーシス誘導作用の報告がされています。
βカルボリンはモノアミン酸化酵素の働きを阻害することで神経伝達物質の分解を抑える働きがあり、抗うつ薬や抗パーキンソン病の治療薬などに用いられている成分です。
シクロL・トロイシルL・プロリンはモルヒネ依存症を軽減する作用があります。
別名3-デオキシアデノシンと呼ばれ、がん細胞の周辺にコルジセピンが存在することでがん細胞が複製を行う際に取り込むアデノシンの代わりにコルジセピンが取り込まれ、がん細胞の崩壊を促す働きがあります。
コルジセピンは正常細胞が増殖する際には取り込まれないため、がん細胞だけに絞った増殖の阻害作用が期待されています。
メラトニンは強力な抗酸化物質で細胞内の抗酸化酵素の活性を高める働きがあり、核DNAおよびミトコンドリアDNAを保護するほか、一酸化窒素や過酸化脂質など様々なフリーラジカルを消去する作用を持ち、がん細胞の発症や増殖を抑制する働きが期待できます。
脳細胞の酸化を防ぐことで痴呆、アルツハイマー病、パーキンソン病などの予防効果も期待されている成分です。
メラトニンが5分の1程度しか体内で産生されない夜間勤務者の場合は、乳がんは2倍、前立腺がんは3倍程に発症数が増えるとアメリカの疫学調査で報告されています。
ミリオシンは免疫機能を抑制する作用を有する化合物で臓器移植の拒絶反応の抑制やインフルエンザやC型肝炎ウイルスの予防や治療、自己免疫疾患の改善作用などが期待できる「FTY720」と呼ばれる治療薬にもなっています。
日本冬虫夏草の抗腫瘍性効果
Th1細胞は細胞性免疫と呼ばれ「IFN-y(インターフェロンガンマ)」というサイトカインを分泌することでキラーT細胞やB細胞に指示をだしてウィルスや細菌などの抗原を攻撃します。
Th2細胞は液性免疫と呼ばれダニや花粉などのアレルゲンに反応してアレルゲンを除去する「IgE抗体」を作るようにB細胞に指示を出す働きがあります。
Th1とTh2はお互いの働きを抑制し合っていますが、日本冬虫夏草二次代謝産物に含まれる成分には消化管免疫応答によってTh1優位に免疫応答が活性化させる働きがあり、これによりサイトカインの産生が活発化すると感染予防、腸内健全化、およびアレルギー抑制などの作用や体内の生体防御能力の増強による抗腫瘍性の向上などが期待できます。
また、Th1優位に免疫が増強されることで産生量されるIFN-yは白血球の1種で体内の変性物質や細菌を捕食して取り除く働きを持つマクロファージの活動を活性化させる働きがあり、日本冬虫夏草と抗がん剤を組み合わせて使用することでモルモットに対する延命率に平均で2.5倍の差が生じるという研究結果が『2004年日本薬学会第124回年会』で発表されています。
(日本冬虫夏草の動物実験では制癌剤によって免疫応答を意図的に弱めた個体だけでなく、制癌剤を投与していない正常な個体にも免疫応答を選択的に増強させる作用が見られました。)
更に、日本冬虫夏草の二次代謝産物には血管新生を促進させる働きを持つマトリックスプロテアーゼの活動を阻害する作用があり、がん細胞周辺の血管新生を阻害することで腫瘍への栄養や酸素の供給や血流に乗って起こる遠隔転移を防ぐ作用が期待できます。