がん(癌)部位別情報

◆食道がん

食道は咽頭と胃の間をつなぐ部分で、口から食べた食物を胃に送る働きをしています。
食道には胃や腸のように消化機能はなく、身体の中心を通っていて上部は気管と背骨の間、下部は心臓と大動脈、肺に周囲を囲まれています。

食道がん(食道癌)の発症は50歳代から急速に増え始め60歳代がピークになります。
男女比は10:1程で圧倒的に男性の患者さんが多いがんです。
これは「喫煙お酒熱い食べ物を良く食べる」などの男性に多い行動が食道がんのリスクを高める危険因子であるためです。
※詳しくは生活習慣とがんの発生について書いた「がんは予防できる」をご覧下さい。

食道の内壁は粘膜で覆われていて、食べ物が通りやすいように粘液を分泌しています。
食道がんの95%程は粘膜表面にある扁平上皮細胞から発生する扁平上皮がんになります。
他に腺上皮から発生する腺がんもあります。

腺がんは、胃液が食道方向へ逆流することで起こる逆流食道炎が原因となる場合が多いです。
日本人には圧倒的に扁平上皮がんが多いですが、欧米では腺がんが半数以上を占めていることからも、日頃の生活習慣が食道がんの発症に関与していることがわかります。

食道の内壁は粘膜上皮層、粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、外膜という6つの層に分かれていて、どこまで浸潤しているかで食道がんの進行具合が決まります。

食道がんは内壁の粘膜表面にできて、大きくなってくると筋層に入り込み、さらに大きくなると食道壁を超えて周囲にある気管や大動脈、肺、心臓などに浸潤していきます。
また、食道内壁や周囲にあるリンパ管や血管にがんが転移すると、それらの流れに沿って首のリンパ節や腹部リンパ節、肝臓、肺、骨などに転移していきます。

食道がんの症状

早期の食道がんは食べ物を飲み込んだときや熱いものを飲み込んだときに違和感を感じることがありますが、この症状はがんが進行すると感じなくなることが多く、そのまま症状が進行する場合も多いです。 このため、健康診断や人間ドックの時に、内視鏡検査などで発見される食道がんが20%近くあります。

食道がんが大きくなると肺や背骨が圧迫されて痛みを感じるようになります。
気管支や肺に浸潤したときには咳や痰が出るようになります。

声を調節する神経が食道のすぐそばを通っているため、この神経ががんに侵されると声がかすれるようになります。

食道がん(食道癌)の診断

食道がん(食道癌)の場合、粘膜下層までのがんであれば術後の5年生存率は80%を越えます。
進行していても手術でとりきれた場合、5年生存率は50%以上になりますので早期発見が大切です。
早くみつかれば、内視鏡を使った治療が可能であり、開腹手術によって胃を切除する必要がなくなる場合があり、負担が大幅に減るので積極的に検診を受けることをお勧めします。

食道がん(食道癌)の検診の方法としてはX線検査(レントゲン検査)や内視鏡検査が一般的です。
他にがんの拡がり具合を見るためにCTやMRI、超音波内視鏡検査などを行うこともあります。
食道がんの進行程度を正確に診断することは、治療法を選択する上で非常に重要なことです。

  • 内視鏡検査
  • 内視鏡検査は先端にレンズの付いた細い管(内視鏡)を口から通して粘膜の状態を観察する検査で、無症状の食道がん、初期の食道がんを見つけるために極めて有用な検査になります。
    レントゲン検査で異常が見つからなかった場合にも内視鏡検査でがんが発見されることがあります。
    食道にルゴール液(ヨウ素液)を散布すると正常な細胞は茶褐色に染まりますが、癌細胞は染まらないため白く抜けて見えます。この方法で小さな癌でも見つけることができます。
    確定診断をするためには、がんの疑いがある細胞を採取して顕微鏡で癌細胞の有無を調べる生検組織診断(生検)が行われます。

  • 超音波内視鏡検査
  • 内視鏡の先端に超小型の超音波断層装置をつけて内視鏡検査と同様に検査を行いますが、食道壁の断層像からがんの深達度を判断することができます。
    また食道の外側にあるリンパ節の状況も判断することが可能です。

  • CT検査(食道がんの検査)
  • CT検査(CTスキャン)はいろいろな角度から体内の詳細な画像を連続的に撮影しコンピュータを使って非常に鮮明な画像を得ることができます。
    超音波検査で調べきれなかった場合でもがんを見つけることができます。
    周囲の臓器やリンパ節転移の有無を調べることができ癌の進行具合を調べるためには重要な検査になります。

  • MRI検査
  • MRI検査は磁場を使っていろいろな角度から体内の詳細な画像を連続的に撮影する検査です。
    放射線の被曝がなく超音波検査では見分けの付きにくいがんもMRI検査で診断できる場合があります。
    しかし、CT検査検査と比較してリンパ節転移などの有無の判断が劣るため食道検査では一般的ではありません。

  • PET検査
  • 現時点では限られた施設にしかありませんが、細胞分裂の盛んな細胞(癌)はエネルギー(ブドウ唐)を正常細胞よりも多く消費するという性質を利用した画像検査PET(ペット)が行われるようになってきました。
    検査ではまず、「フッ素18」という放射性物質を付けたブドウ糖(FDG)を静脈注射します。
    他の細胞と比較して異常な速さで増殖するがん細胞は多くのエネルギーを必要とし、ブドウ糖をより多く消費する性質があります。
    ブドウ糖はがんの部分に集まり、それだけ放射線を多く放出するので画像で濃く見えるのです。
    しかし、画像の鮮明さでは内視鏡検査には及ばないため他の検査とあわせることも重要になります。
    PETを用いた検査は患者さんの苦痛がないことが大きなメリットです。

  • 血液検査
  • 食道がんの検査に使用される血液検査と基準値を示します。
    基準値は施設によって基準値が異なりますので詳しくは検査機関にお問合せ下さい。
    また、これらの数値は食道がん以外の病気でも高くなることがありますので、目安としてお考え下さい。

  • SCC 基準値 1.5ng/ml以下 (食道がんの腫瘍マーカー検査)
  • SCC抗原は食道がん、子宮頚部がん、肺がん、頭頚部がん、などの扁平上皮癌患者の血中に高頻度に検出されることが報告されており、それらの優れたマーカーとなります。

  • CEA 基準値 5.0ng/ml以下 (食道がんの腫瘍マーカー検査)
  • CEAは食道癌や胃がん、大腸がんなどの消化器癌、胆道癌、膵癌、肺癌などのさまざまな臓器由来の癌に幅広く出現するため、その診断補助および術後・治療後の経過観察の指標として有用性が認められています。

    食道がん(食道癌)の治療

    食道がん(食道癌)の治療法は「外科療法(手術)」が中心となります。
    他に「化学療法(抗がん剤)」「放射線療法」があります。
    外科療法にはさまざまなものがあり、がんの進み具合(病期)やがんの部位、患者さんの年齢、合併症の有無などから判断されます。

    食道がん(食道癌)の病期(ステージ)はがんの深さや転移の有無などによって分類されます。

    0期

    癌細胞が粘膜上層に留まっており胸膜、腹膜、リンパ節、他臓器に転移が見られない状態

    Ⅰ期

    癌細胞が粘膜上層に留まっているが近辺のリンパ節に浸潤している、もしくは粘膜下層まで浸潤しているが胸膜、腹膜、リンパ節、他臓器に転移が見られない状態

    Ⅱ期

    癌細胞が筋層を超えてわずかに浸潤している、もしくは粘膜下層およびリンパ節への浸潤が認められ癌細胞が筋層を超えてわずかに浸潤している

    Ⅲ期

    癌細胞が筋層を超えて明らかに浸潤している、もしくは食道壁周辺または少し距離の離れたリンパ節に浸潤しているが胸膜、腹膜、他臓器に転移が見られない状態

    Ⅳ期

    癌細胞が周囲の臓器まで、離れたリンパ節にまで浸潤していることが認められた、または胸膜、腹膜、他臓器に転移が認められる状態

    食道がんの治療-内視鏡的治療

    リンパ節転移の可能性がないと考えられる早期食道がん(0期)は手術をせずに内視鏡的による切除が可能です。
    ただしがんが粘膜内に留まっていても大きく拡がっている場合には内視鏡的治療が難しいときもあります。

    内視鏡的粘膜切除術後は、切除した癌組織を顕微鏡で詳しく調べ、がんが粘膜固有層までに留まっていればリンパ節転移の可能性がほとんどないためここで治療は終了します。

    しかし、粘膜下層までがんが浸潤している場合にはリンパ節に転移している可能性があるため放射線療法(+抗がん剤)が行われる事になります。

    食道がんの治療-外科手術療法

    食道がんの標準的な治療で、がんを含めて食道を手術で切除します。
    適応となるのはI期~III期までの食道がんで、IV期の場合には外科手術は行われません。

    また、高齢で体力的に手術に耐えられないと判断された場合や、心臓や肺などに合併症があり手術が困難な場合にも適応とならない場合があります。

    食道がん(食道癌)の場合、がんの発生部位により手術の方法が異なってきます。

    また手術の結果起こる合併症が少なからずあります。
    肺炎は20%程度、縫合不全20%程度、胃・肝臓・心臓などの障害が5%以下で、さらに死亡に繋がる確率は全体で2%程度あります。
    手術前から合併症がある場合にリスクが高くなりますので、手術前には医師と手術をやる理由、手術の術式や予想される時間、リスクなどについて確認する必要があります。

    頸部食道がんの外科手術

    食道がんが、頸部に留まっていて周囲への拡がりが無い場合には頸部食道のみを切除すると同時に頸部リンパ節の切除(リンパ節郭清)も行います。
    小腸の一部を移植して食道を再建します。

    がんが喉頭(のど)の近くまで拡がっている場合には頸部食道とともに喉頭も切除し、小腸の一部を移植します。
    喉頭を切除してしまうため声帯が失われ声が出せなくなります。
    その場合には代用音声を用いることになります。
    また呼吸機能も失われるため気管の入り口を首(頸部)の皮膚につなげて気管孔をあけることになります。

    胸部の食道にまでがんが拡がっている場合には胸部食道も切除する必要がでてきます。
    この場合、胃を食道の代わりとして用いる再建術が行われます。

    胸部食道がんの外科手術

    胸部食道がんの場合には、胸を大きく開いて胸部の食道全てを切除すると同時に胸部リンパ節郭清を行います。

    ほかに頸部と腹部を切開して食道を引き抜く方法もありますが、食道周囲のリンパ節郭清ができないというデメリットがあります。

    最近では胸腔鏡を使って開胸せずに胸の中のリンパ節を切除する方法も試みられています。
    胸部食道がんでは、腹部や頸部のリンパ節にも転移をおこすことが多いので、腹部や頸部のリンパ節も郭清します。
    食道を切除した後、胃を管状に成形して持ち上げ残った頸部食道とつなぎあわせます。

    腹部食道がんの外科手術

    腹部食道がんの場合には、左側を開胸して腹部食道と食道とつながる胃の噴門部という部分を切除して、残った食道と胃をつなぎ合わせる手術が行われます。

    食道がんの治療-放射線療法

    放射線療法は高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺す治療方法です。
    食道がんの場合、放射線療法を単独で行うことは一般的ではありません。
    通常は抗がん剤と併せて行う放射線化学療法が行われます。
    しかし、抗がん剤の副作用が強く出てしまう、高齢者、合併症があるなどの理由で抗がん剤が使えない場合には単独で放射線療法が行われることがあります。

    また、骨への転移のための痛み、脳転移の神経症状、呼吸の苦しさなどの症状を緩和する目的で放射線療法が行われることがあります。

    正常な細胞に放射線が照射されると正常な細胞がダメージを受け副作用が出ることがあります。
    副作用には治療中又は治療直後にでるものと、半年~数年後にでてくるものとがあります。

    放射線の照射量には決まりがあり、無理をして大量の放射線照射を行うと強い副作用が出る可能性が高いため注意が必要です。

    あらかじめ医師に照射量(一日の量と期間)を確認しておく必要があります。

    食道がんの治療(抗がん剤)

    遠隔転移などのために外科療法で切除しきれない場合や、手術後にがんが再発した場合、放射線が照射できない場合には化学療法(抗がん剤)による治療を行います。

    使用される抗がん剤としては「5FU+シスプラチン(他にランダ、ブリプラチン)」が一般的です。

    食道がんの治療(放射線療法)

    手術ができない患者さんだけでなく、I~III期の患者さんにも適応できる治療法として最近注目されつつある治療法です。

    この治療法は放射線療法と化学療法を同時に進めていく方法で、この療法により手術をしなくても治る患者さんが増えてきているという報告もあります。

    放射線療法や抗がん剤を用いた化学療法では白血球減少による免疫力の低下が起こりやすいため体を清潔に保つことが大切ですし、規則正しい生活を送る必要があります。
    免疫力を賦活させることが大切
    です。

    また、骨髄損傷による白血球減少、血小板減少、貧血などが起こりやすいため造血機能を強化することも大切になります。

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