がん(癌)部位別情報

◆胆道がん

胆道がんとは肝臓で作られた胆汁が十二指腸まで排出されるまでの通り道(胆道)にできるがんで胆管がん(胆管癌)と胆嚢がん(胆嚢癌)のことを指します。

胆道がんは胆嚢がん(胆嚢癌)と胆管がん(胆管癌)に分けることができ、胆管がん(胆管癌)はさらに、肝内胆管がんと肝外胆管がんに分けられます。
このうち、一般に胆管がん(胆管癌)といえば肝外胆管がんのことをさし、肝内胆管がんは肝臓がん(肝臓癌)として扱われます。

胆嚢は胆汁を一時的に貯留して濃縮する袋で、この胆嚢にできる悪性腫瘍の事を胆嚢がん(胆嚢癌)と呼びます。
胆嚢がん(胆嚢癌)は女性に比較的多く発生します。また胆嚢がん(胆嚢癌)の患者さんの多くは胆石をもっています。
胆石による慢性的な刺激が胆嚢の細胞をがん化させると考えられています。
胆石をもつ女性の1割に胆嚢がん(胆嚢癌)が発生しています。

胆管は肝臓でつくられる胆汁を十二指腸まで導く管で、肝臓の外に出てから胆嚢まで続く部位にできる悪性腫瘍の事を胆管がん(胆管癌)と呼びます。 胆管がん(胆管癌)は膵液が胆管内に逆流する解剖学的な異常を伴うことが多く、膵液などの化学的刺激が関与していると考えられます。

胆管がん(胆管癌)は胆管の内側の粘膜から発生し、多くは浸潤性発育といって周りの組織にしみこむように拡がることが多くなります。
またがん細胞が胆管の粘膜層ではなくその下の組織に浸潤することも多くみられます。
他に胆管の管の内側に盛り上がるようにして大きくなることもあります。
腫瘍としての塊を作らない場合が多いので画像診断が難しく、発見されたときにはがん(癌)が進行していて末期という事が珍しくありません。

胆道癌(胆嚢癌と胆管癌)の発生は年々増加してきており、胆道がんの死亡者数は1985年にはおよそ9500人、1990年には12000人、1999年には15000人にまで増加しています。
このうち、胆管がん(胆管癌)による死亡者数は8500人、胆嚢がん(胆嚢癌)による死亡者数は6500人でした。

早期発見による外科手術が唯一の治癒の可能性がある治療になるため、早期発見を行えるように努力が続けられています。

胆嚢がん、胆管がんの症状

胆石を併発している胆嚢がん(胆嚢癌)の初期では胆のう炎による腹痛や発熱などの症状が出ることがあります。
しかし、多くの場合初期には自覚症状が見られないことがほとんどです。

胆嚢がん(癌)が進行すると腹痛が起こりやすくなります。
腹痛は最もよくみられる症状で、上腹部や右の肋骨の下に鈍痛が出現します。
胆石が合併していれば、繰り返しおこる強い痛みや右の背中へ広がる痛みがおこることがあります。

胆嚢がん(癌)では腹部腫瘤(しゅりゅう)といって右の肋骨の下にシコリとして胆嚢を触れることがあります。
胆管がん(癌)の場合には比較的初期の段階から黄疸が現れることがあります。

胆嚢がん・胆管がんのいずれのがんでも、がんが大きくなって胆管が詰まると胆汁の流れが悪くなり白目や手足などが黄色くなる黄疸がでることがあります。
胆汁中に含まれるビリルビンという黄色い色素のために身体が黄色くなるのです。
黄疸時には身体のかゆみや尿の色が濃くなったり、胆汁が十二指腸に流れなくなるため便が白くなります。

胆嚢がん、胆管がんの診断

胆嚢がん(癌)や胆管(癌)は自覚症状があまりないため早期発見は難しいのですが、最近は診断技術の進歩により以前と比較して早期発見ができるようになってきました。

  • 画像検査
  • 胆道がん(胆管がん・胆嚢がん)は胃がんや大腸がんなどのように消化管の内側にできるがんとは異なるため直接がんを見つけることはできません。
    そのためがんを正確に描出し診断することは容易ではありません。
    しかし最近の画像診断技術の進歩によって、見つかりにくい胆管がん(癌)や胆嚢がん(癌)でも早期に発見し、拡がり具合をかなり正確に診断できるようになってきました。

  • 超音波検査(胆嚢がん・胆管がんの超音波検査)
  • 胆管や胆嚢の異常がすぐ分かるため胆道がん(胆嚢がんや胆管がん)が疑われる場合に行われる画像検査としては最初に行われる検査になります。

    胆管が閉塞して起こる閉塞性黄疸かどうかの判断にとても有用です。
    閉塞性黄疸が起こっている場合には手術が必要になります。
    苦痛も全くなく、すぐに検査結果がわかります。胆管がんでは、閉塞性黄疸を伴うことが多いので、超音波検査は最初に行われるべき検査です。

  • CT検査(胆嚢癌・胆管癌のCT検査)
  • CT検査(CTスキャン)はX線を用いていろいろな角度から体内の詳細な画像を連続的に撮影しコンピュータを使って非常に鮮明な画像を得ることができます。
    超音波検査で調べきれなかった場合でも胆嚢がん(胆嚢癌)や胆管がん(胆管癌)を見つけることができる場合があります。

  • MRI検査(胆嚢癌・胆管癌のMRI検査)
  • MRI検査は磁場を使っていろいろな角度から体内の詳細な画像を連続的に撮影する検査です。
    放射線の被曝がなく超音波検査では見分けの付きにくい胆嚢がん(胆嚢癌)や胆管がん(胆管癌)でもMRI検査で診断できる場合があります。

  • 内視鏡的逆行性胆管膵管造影-ERCP検査
  • 胆管と膵管に造影剤を入れてX線撮影する検査で、内視鏡を十二指腸まで挿入して胆管と膵管の共通な出口になっている十二指腸乳頭に細い管を差し込んで造影剤を入れます。

    鮮明な画像を得ることができ、がんの存在部位が正確に診断可能です。
    主に腫瘍で閉塞している部位より下流測の胆管像がえられます。
    下記のPTCと併用することで、狭窄(きょうさく)・閉塞部位についてより詳しい情報が得られます。
    胆管がんや胆嚢がんでは有効な検査方法です。

  • 経皮経肝胆管造影-PTC検査
  • 皮膚の上から肝臓を経て上部胆管に針を刺し、造影剤を注入して胆管のX線撮影を行う検査です。
    胆管の狭窄や閉塞の様子を詳しく知ることができます。
    腫瘍の存在部位や拡がりの診断に有用です。
    胆管がんや胆嚢がんでは有効な検査方法です。

    この検査を行う際には、黄疸の治療として下に流れなくなった胆汁を身体の外に出す処置をすることが普通です。
    太くなった胆管に管を挿入して留置しておくと詰まっていた胆汁が体外に流れ出していくため黄疸が解消されるのです。
    この方法を経皮経肝胆道ドレナージ術(PTCD)とよびます。

    取り出した胆汁から癌細胞の有無を調べることで癌の確定診断ができます。

  • 経皮経肝胆道鏡検査-PTCS検査
  • 経皮経肝胆道ドレナージ術を行った際の管を拡張して胆道鏡を挿入し胆管の粘膜を観察したり、その小さな組織片を採取し、腫瘍の拡がりをより詳しく調べる方法です。

  • 血管造影検査(胆嚢癌・胆管癌のMRI検査)
  • 血管造影検査は、足の付け根の動脈から細い管を挿入して造影剤を注入し、胆道につながる血管を映しだす検査です。
    胆道の血管の状態、血流の状態を見ることでがんの診断や拡がり具合を判断します。

  • 血液検査
  • 以下に胆管がん(癌)と胆嚢がん(癌)の検査に使用される血液検査と基準値を示します。
    基準値は施設によって基準値が異なりますので詳しくは検査機関にお問合せ下さい。
    また、これらの数値は胆道がん以外の病気でも高くなることがありますので、目安としてお考え下さい。

  • ビリルビン(Bil) 基準値 0.2-1.1mg/dl (胆嚢癌・胆管癌の検査)
  • 直接ビリルビンは胆汁酸、レシチンなどと結合して胆汁を形成し、肝臓から胆管、胆嚢を経て十二指腸に排出されます。
    ビリルビンが排泄される間に異常があるとビリルビンの数値が高くなります。
    胆嚢がん(癌)や胆管がん(癌)で黄疸症状が出る場合にはこの数値が高くなります。

  • アルカリホスファターゼ(ALP) 基準値 100-325IU/l (胆嚢癌・胆管癌の検査)
  • アルカリフォスファターゼ(ALP)は生体の細胞膜に広く分布し、アルカリ側のpHでさまざまなリン酸化合物を分解する酵素です。
    胆汁を介して肝臓から排出されるので胆汁の流出障害を検出するのに重要な検査になります。
    また骨代謝系の疾患などでも高値になります。
    胆嚢がん(癌)や胆管がん(癌)で胆汁の流出障害がある場合にはこの数値が高くなります。

  • CA19-9 基準値37 U/ml以下(胆嚢がん・胆管がんの腫瘍マーカー)
  • CA19-9は膵癌、胆道がん(胆嚢がん・胆管がん)を始めとする各種消化器癌患者血中に高頻度かつ高濃度に検出され、優れた腫瘍マーカーとしてその臨床的評価が確立しており、最もよく測定される腫瘍マーカーの一つです。

  • CEA 基準値 5.0ng/ml以下(胆嚢がん・胆管がんの腫瘍マーカー)
  • CEAは大腸がん(癌)をはじめとする消化器がん(癌)、胆道がん(胆嚢がん・胆管がん)、膵がん(癌)、肺がん(癌)などのさまざまな臓器由来のがん(癌)に幅広く出現するため、その診断補助および術後・治療後の経過観察の指標として有用性が認められています。

    胆嚢がん、胆管がんの治療

    胆道癌(胆嚢がん/胆管がん)の治療は「外科療法(手術)」が中心となります。
    他に「放射線療法」「化学療法(抗がん剤)」があり、がんの進行度(病期:ステージ。下記表参照)や患者さんの全身状態を考慮して治療法が選択されます。
    現在の胆嚢がん、胆管がん治療では早期発見時に手術を行う以外には根治を目指すことは困難といえます。

    胆嚢がん、胆嚢癌

    Ⅰ期

    がんが胆嚢内に留まっている状態。リンパ節への転移や肝臓内への浸潤、胆管への浸潤などが無い状態です。

    Ⅱ期

    がんが胆嚢の周囲にわずかに拡がっている状態で、胆嚢に最も近い第一群とよばれるリンパ節転移があるか、肝臓または胆管への浸潤がわずかに疑われるような状態であればⅡ期になります。

    Ⅲ期

    がんが胆嚢の外に明らかに出ている、二群~三群のリンパ節転移がある、肝臓や胆管への浸潤が明らかにあるのいずれかの状態であればⅢ期になります。

    Ⅳ期

    がんが胆嚢の外の他の臓器に浸潤している、第四群リンパ節といって一番遠いリンパ節まで転移がある、肝臓や胆管への浸潤がかなり進んでいるこれらの一つでも当てはまればIV期になります。また、腹膜転移、肝臓転移が少しでもあればⅣ期と判断します。

    胆管がん、胆管癌

    Ⅰ期

    がんが胆管の中だけにとどまっている状態です。

    Ⅱ期

    胆管と隣り合う臓器に拡がっている事が疑われるか、胆管の近傍のリンパ節に転移をしている状態です。

    Ⅲ期

    胆管と隣り合う臓器(膵臓、肝臓、十二指腸、胆嚢など)に浸潤して拡がっているが、その範囲が近傍にとどまっている状態、または、II期よりも遠いリンパ節に転移をしている状態です。

    Ⅳ期

    Ⅲ期より遠くまで浸潤していたり、肝臓へ転移していたり、腹部の中にがん細胞が拡がる腹膜播種がある状態です。

    胆嚢がん-単純胆嚢摘出術

    がんが胆嚢の粘膜内にとどまっているような早期がんで行うことができる手術です。
    この手術が適応となる早期胆嚢がん(胆嚢癌)であれば90%以上が完治します。

    胆嚢がん(胆嚢癌)がある程度進行すると胆嚢の壁を破ってリンパ節や隣接した肝臓や十二指腸に浸潤していきます。
    浸潤の程度、転移先によって手術法が選択されます。

    胆嚢がん-拡大胆嚢摘出術

    胆嚢の周囲にがんがわずかに浸潤している場合に行われる手術です。
    胆嚢、胆嚢に接した肝臓の一部、所属リンパ節を一緒に切除します。
    通常は、I期またはII期の胆嚢がん(胆嚢癌)に対して行われます。

    胆嚢がん-肝門部切除術

    胆嚢の周囲にがんが明らかに浸潤している場合に行われる手術です。
    胆嚢、胆管と肝臓の一部、所属リンパ節を一緒に切除する方法です。
    肝臓の切除範囲が大きくなり、胆管も切除するため胆汁が流れる通路を再建する必要があります。
    通常は、II期またはIII期の胆嚢がん(胆嚢癌)に対して行われます。

    胆嚢がん-肝葉切除術

    がんがさらに大きく転移している際に行われる手術で、肝臓の右葉(肝全体の60%)を切除する拡大手術です。
    リンパ節も第3群や4群まで切除する場合があります。
    通常は、III期またはIV期の進行した胆嚢がん(胆嚢癌)に対して行われます。

    胆嚢がん-肝膵十二指腸切除術

    がんが肝臓だけではなく膵臓や十二指腸にまで拡がっている場合に行われる手術です。
    膵臓や十二指腸も切除することになります。
    進行した胆嚢がん(胆嚢癌)に対して行われます。

    胆管がんの治療

    胆管は肝臓や膵臓、十二指腸の間を縫うように走行しており、周囲には門脈や肝動脈などの重要な血管が走っています。
    そのため、がんがどこにあるか、またどの程度まで広がっているかによって、手術の仕方が違ってきます。
    手術では胆管とその周囲のリンパ節を含んだ結合組織をまとめて切り取るのが基本です。

    胆管がん-肝門部胆管がん

    肝門部胆管は胆管や多くの血管が肝臓に出入りする場所であり非常に複雑な場所になります。
    この部位にできているがんを切除するためには胆管造影でがんが拡がっている方向を確認し胆管と併せて肝臓の左右どちらか半分を切除することになります。

    肝臓は再生能力の非常に高い臓器で通常であれば70%近くを切除してもほぼ元通りの大きさに戻るため機能的には問題がないと考えられています。
    しかし、肝機能が低下している人の場合には大きく切除してしまった場合に残った肝臓の機能が十分でなく命に関わる事態になることもあります。

    そこで、がんの広がりが大きかったり、肝機能が低下している場合には経皮経肝門脈塞栓術という方法をとり左右いずれか残すほうの肝機能を高めてから肝切除を行うことになります。

    胆管がんの治療-外科手術

    中部の胆管および下部の胆管にがんが発生した場合には胆管とともに膵臓の一部と十二指腸を含めて切除する肝膵十二指腸切除術が行われます。

    がんの浸潤範囲が肝門部胆管から下部胆管まで拡がっている場合には、肝臓と膵臓両方を同時に切除しなくてはならなくなります。
    このような手術は腹部手術で最も大きくて手間がかかり、それだけ危険も大きく現時点で安全に行われるとはいえない大変危険な手術になります。
    そのため手術治療で得すること(メリット)と手術により命を含めて失われるもの(デメリット)とのバランスを考えた治療法の選択が必要になります。

    胆嚢がんの治療-放射線療法

    放射線療法は高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺す治療方法ですが、胆嚢がん(胆嚢癌)に対する放射線療法は、一般的にはあまり効果が期待できないといわれています。

    しかし、胆管閉塞が改善される可能性があるため胆嚢がん(癌)が原因の黄疸症状の緩和のために行われることがあります。

    胆管がんの治療-放射線療法

    胆管がんは正常な組織と放射線の感受性それほど変わりません。
    そのため放射線治療はほとんど効きません。
    手術の後に行われることがありますが有効性は実証されていません

    胆嚢がんの治療-全身化学療法

    胆嚢がんに対して抗がん剤はほとんど効果がなく現在は臨床試験(実験)段階にあります。
    効果が期待できる抗がん剤としては5-FU、マイトマイシンC、アドリアマイシン、シスプラチン(他にランダ、ブリプラチン)と呼ばれるものがありますが、標準的治療法はありません
    いくつかの薬剤を組み合わせて治療する臨床試験が行われています。

    胆管がんの治療-全身化学療法

    胆管がんに対する抗がん剤の治療はまとまった報告がなく、どの程度有効なのかは今後検討されていく問題です。
    つまり現時点では有効性はないということになります。

    胆道(胆嚢がん/胆管がん)は放射線療法や化学療法が効きにくいがんで、これらの治療でがんが治ることはありません。
    胆嚢がんや胆管がんなどの胆道がんは手術以外に確立された治療法がないのが現状です。

    放射線療法や抗がん剤を用いた化学療法では白血球減少による免疫力の低下が起こりやすいため体を清潔に保つことが大切ですし、規則正しい生活を送る必要があります。 免疫力を賦活させることが大切です。

    また、骨髄損傷による白血球減少、血小板減少、貧血などが起こりやすいため造血機能を強化することも大切になります。

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